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技術情報

生型材料及び生型試験法の基礎(改訂版)

株式会社ツチヨシ産業 水田豊昭・黒川 豊

3.生型砂構成物の解説

■1-けい砂(Silica sand)
●けい砂とSiO2
けい砂は,石英(SiO2)を主成分とし,一定のサイズを持った耐火物である.
一般的にSiO2の高いけい砂は,膨張系の欠陥が発生しやすいが焼付き欠陥は発生しにくい.
生型は,主型と中子で粘結剤の種類や量が異なるために,それぞれの鋳型で要求されるけい砂のSiO2が異なる.
個々の鋳物で異なるケースが多いが,一般的には,Table3の関係になる.

Table3 鋳型の種類とSiO2の関係
  主型用 中子用
85%以下 耐火度不足
一般的には使用しがた い
適用できる鋳物もあるが, 焼付きが発生しやすい
85~90% 比較的焼付きが発生しやすい 使用可能である
低膨張基材として使用する
90~95% 使用可能である 使用可能である
95~100% 使用可能である 使用可能であるが,やや膨 張系の欠陥が発生しやすい

●けい砂の粒度と焼付き欠陥の関係
けい砂のサイズは,生型用としては,AFS指数で50~100(0.30~0.15mm)が多い.
AFS指数が大きくなると,粒子サイズが大きくなる.
粒子サイズが大きい方と通気性がよく,ガス欠陥の危険性が少ないが,物理的焼付き欠陥が発生しやすく鋳肌が悪い.
Fig.3-1に溶湯ヘッド高さと平均粒子サイズの関係を示す.
平均粒子サイズが大きくなるにしたがって,ヘッド高さを低くしなければ,焼付き欠陥が発生しやすくなる.
Fig.3-1 焼付きに対するけい砂粒度と溶湯ヘッド高さの関係*)
▲Fig.3-1 焼付きに対するけい砂粒度と溶湯ヘッド高さの関係*)

Fig.3-2に,溶湯と鋳型界面における焼付き欠陥の圧力バランスを示す2).
圧力バランスは(1)式に示される.さらに,(1)式の各項は(2)~(7)式により導かれる.

Fig.3-2 溶湯と鋳型界面における焼付き欠陥の圧力バランス
▲Fig.3-2 溶湯と鋳型界面における焼付き欠陥の圧力バランス

ここに,
Pst :static pressure(静圧)
Pdyn :dynamic pressure(動圧)
Pexp :expansion during solidification(only for cast iron)(凝固膨張)
:capillary pressure(毛細管圧)
Pf :friction between the liquid metal and the sand grains(鋳型溶湯間の摩擦力)
Pgas :pressure resulting from the expansion of the mold gasses(鋳型背圧)

ここに,
γLV :liquid metal/vapor surface energy(液体金属及び蒸気の表面エネルギー)
de :average pore opening between sand grains(砂粒子の平均空隙)
θ :contact angle(接触角)

ここに,
γSV :solid metal/vapor surface energy(固体金属及び蒸気の表面エネルギー)
γLS :liquid metal/vapor surface energy(液体金属及び蒸気の表面エネルギー)

ここに,
μ :viscosity of the liquid metal(液体金属の粘性)
K :permeability of the molding sand(鋳型の通気度)
Lp :length through which the liquid flows(depth of penetration)(焼付き深さ)
Vp :speed with which the metal moves through the sand(鋳型内の金属移動速度)

ここに,
fd :fractional density of the molding sand(鋳型密度)
d :average grain diameter(砂粒子の平均直径)

ここに,
ρ :density of the alloy(金属の密度)
g :gravitational acceleration(重力加速度)
h :height of the metal in the mold(溶湯のヘッド高さ)

ここに,  
V :velocity of the metal that hits the mold wall(金属の粘性)

溶湯と鋳型界面における焼付き欠陥の圧力バランスは,溶湯側から働く圧力Pst(静圧),Pdyn(動圧),Pexp(凝固膨張)と,鋳型側から働く圧力Pγ(毛細管圧),Pf(鋳型溶湯間の摩擦力),Pgas(鋳型背圧)に左右される.
砂粒子の大きさは,主にPγ(毛細管圧)により圧力バランスに影響する.
(2)式において,砂粒子が大きくなることで,de(砂粒子の平均空隙)が増加しPγ(毛細管圧)が低下する.
なお,(2)式におけるcosθ(接触角)は通常,θ>90°であり、cosθ(接触角)はマイナスとなり,Pγ(毛細管圧)はプラスとなる.ただし,θ<90°では、cosθ(接触角)はプラスとなり,Pγ(毛細管圧)はマイナスとなる.
θ<90°となる条件は,鋳型内部に低粘性スラグの生成,けい砂の溶融,低融点物質の生成した場合である.cosθ(接触角)の概念図はFig.3-3に示す
また,けい砂の種類によって,接触角は変化する.
Fig.3-4にけい砂及び特殊砂の各C値における接触角を示す.
けい砂は接触角が低いために焼付きが発生しやすい傾向にあるが,カーボンサンド,クロマイトサンド,ジルコンサンドは順次,接触角が高くなり,焼付きが発生しがたいと言える.

Fig.3-3 接触角の概念図
▲Fig.3-3 接触角の概念図

Fig.3-4 鋳物砂の種類と溶湯接触角の関係
▲Fig.3-4 鋳物砂の種類と溶湯接触角の関係

●特殊基材
けい砂以外の生型基材として,ジルコンサンド(Zircon sand),クロマイトサンド(Chromite sand),オリビンサンド(Olivine sand),ムライトサンド(Mullite sand)等が使用される.
これらの使用目的で共通 している点は,低膨張基材としてのすくわれ・しぼられ欠陥対策である.
また,ムライトサンド以外はけい砂と比較して熱伝導性や接触角が高くいために,鋳型-溶湯界面 で発生する欠陥(焼付き欠陥,ガス欠陥)防止に効果がある.
さらに,オリビンサンドは,塩基性であるために,酸化雰囲気で発生しやすいファイアライト(2FeO・SiO2)生成による化学的な焼付き欠陥防止に効果的である.


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