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技術情報

生型材料及び生型試験法の基礎(改訂版)

株式会社ツチヨシ産業 水田豊昭・黒川 豊

3.生型砂構成物の解説

■2-ベントナイト(Bentonite)
●ベントナイトの結晶構造と吸水
ベントナイトは,Fig.4の結晶構造を持った粘土鉱物である.
シリカ4面体-アルミナ8面体-シリカ4面体による3層構造であり,2:1型の粘土鉱物である.
ベントナイトの粘結力は,結晶層が電荷を帯びていることにある.
この原因は,主にアルミナ8面体のAl3+が電荷の低いMg2+に同型置換することで,陽電荷が不足することにある.
そして,層間に交換性陽イオン吸着されて存在している.
結晶層の陰イオンと交換性陽イオンに働くクーロン力(F∝q・q′/r2 ここにF:クーロン力,q,q′:電荷,r:距離)によってベントナイトの粘結力が発現する.
このクーロン力は水が結晶層の層間に配列することで働く.  
Fig.5に砂粒子にコーティングしたベントナイトの吸水による特性変化を示す.
層間に水が3分子入ると最大の抗圧力となり,4分子入ると鋳型密度が最も低くなる.
Fig.4 ベントナイト結晶層の模式図3)
▲Fig.4 ベントナイト結晶層の模式図3)

Fig.5 砂粒にコーティングしたベントナイトの吸水による特性変化の模式図4)
▲Fig.5 砂粒にコーティングしたベントナイトの吸水による特性変化の模式図4)

●ベントナイトの種類
鋳造用ベントナイトには3タイプある.
Fig.4の交換性陽イオンがNa+あるいはCa2+によりNaベントナイト,Caベントナイトに分かれる.
活性化ベントナイトは,Caベントナイトに炭酸ナトリウム(Na2CO3)を添加して交換性陽イオンをNa+に変更したベントナ イトである.
3タイプのベントナイトの特徴をTable4に示す.
鋳造用としては,Naベントナイトが主に使用さる.
崩壊性や混練性の改善のために,Naベントナイトに活性化ベントナイトをブレンドすることがある.
Caベントナイトは,鋳造用としては日本ではあまり使用されない.

Table4 3タイプのベントナイトの特徴
sodium bentonite calcium bentonite active bentonite
mixing time long short short
green compression by short mixing low high high
green compression by long mixing high middle middle
dry compression high low middle
loss on heating low high middle
scab resistance good bad middle
collapsibility bad good good

ベントナイトのタイプによって,Table4のように鋳型特性異なる.
また,市販のベントナイトは産地によって,モンモリロナイト純度が異なる.
そのために,Table4のタイプ別の分類が当てはまらないケースが多い.
したがって,ベントナイトを選ぶ際には,個々のベントナイトの特性を十分に理解して選ぶ必要がある.

●生型鋳型の強度
生型砂の強度は,ベントナイトの粘結力に主に起因するが,これ以外に,けい砂の摩擦応力も重要な役目を果たす.
Fig.6に,コンパクタビリティ(compactability)と湿態抗圧力 の関係を示す.

Fig.6 生型砂の抗圧力,せん断力,引張力の関係
▲Fig.6 生型砂の抗圧力,せん断力,引張力の関係

Fig.7 生型試験片における抗圧力,せん断力,引張力試験の荷重
▲Fig.7 生型試験片における抗圧力,せん断力,引張力試験の荷重

Fig.6において,抗圧力は低コンパクタビリティで最大値になり,せん断力及び引張力は高コンパクタビリティ側に最大値のピークが変化する.
これは,ベントナイトの粘結力とけい砂の摩擦応力の関係で説明できる.
Fig.7のモデルから分かるように,抗圧力の場合は,けい砂のずり応力が働くために摩擦応力の寄与率が高くなる.
引張力で測定時に,けい砂の摩擦の影響をあまり受けないので,ベントナイトの粘結力の寄与率が高くなる.せん断力はそれらの中間である.

●ベントナイトの劣化と再水和
Fig.8にベントナイトの熱劣化と再水和による回復を示した.
ベントナイトは,熱により徐々に劣化し,700℃以上では粘結力が無くなる.
ベントナイトの熱劣化は,200~600℃における層間水の脱水による劣化,600~700℃以上における結晶構造の破壊による劣化,の2種類がある.
結晶構造の破壊による劣化は回復させることは不可能であるが,層間水の 脱水による劣化は再水和によってある程度の回復が可能である.
この再水和による回復は,"熟成:the temper of system sand"という現象で,鋳造工場ではよく知られている.

Fig.8 ベントナイトの熱劣化と再水和
▲Fig.8 ベントナイトの熱劣化と再水和


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