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技術情報

生型材料及び生型試験法の基礎(改訂版)

株式会社ツチヨシ産業 水田豊昭・黒川 豊

3.生型砂構成物の解説

■3-澱粉(Starch)
●澱粉の役割
澱粉はベントナイトの補助粘結剤として,以下の3点の目的で使用される.
 (1)砂かみ防止(protect of sand inclusions)
 (2)すくわれ防止(protect of scab)
 (3)型落ち対策(protect of mold drop).
澱粉は,粘結剤として働き,引張力を改善する効果がある.
抗圧力を改善する度合いは低い.
Fig.9に,澱粉で防止できる鋳造欠陥のモデルを示す.
したがって,Fig.9のモデル(C)におけるような引張り応力が鋳型に加わる場合, その応力に耐える効果がある.
砂かみ欠陥の場合,砂粒が鋳型から剥離する現象であるために,澱粉で防止可能である.
すくわれ欠陥は鋳型の一部が膨張で層状となってめくれ上がる現象である.
層状の鋳型の剥離を止める効果 が澱粉にある.
また,澱粉は,焼結した鋳型内ではクッション材の役目を果たし膨張を緩和して,焼結層が剥離する力を弱める.
型落ちは,引張力の増加によって, 鋳型の落下を防止する.
また,模型と鋳型面では滑りの効果があり,離型の際の力を小さくする.
Fig.9 澱粉で防止できる鋳造欠陥のモデル
▲Fig.9 澱粉で防止できる鋳造欠陥のモデル

●澱粉の粘結力
澱粉は,主として分枝状のアミロペクチンがミセルを形成している.
α澱粉では,Fig.10に示したように,ミセル内に水分子が進入することで,膨潤し粘りのある糊となって粘結力が発現する.
Fig.10に澱粉の粘結機構を示す.
分枝状のアミロペクチンが複雑なネットワークとなり,粘結力が発現するために,ベントナイトとは異なる粘結力で,せん断力や引張力に対して抵抗が高くなる.
Fig.10 澱粉の粘結機構5)
▲Fig.10 澱粉の粘結機構5)

●澱粉の使用目的
澱粉は,ベントナイトの粘結力を補完するために二次粘結材であり,添加する必要が生じたときに使用すればよい.
ところが,以下の理由で,最近の生型砂には澱粉添加の必要性が増している.
●高速造型機の普及で,流動性のよい生型砂が好まれる様になってきた結果,低コンパクタビリティの生型砂が多くなってきた.
 →表面安定性が低下気味になり,これを改善するために澱粉が使用されるようになった.
●静圧,インパクト造型機により,高充填鋳型が得られる様になり,鋳型の抜型抵抗が増加してきた.また,これらの造型機では固有のブリッジ現象のために型落ちが発生しやすくなった.
 → 抜型抵抗,離型抵抗の増加のために澱粉が使用されるようになった.
●高充填鋳型のために,従来の中~高圧造型機では発生しないすくわれ・しぼられ欠陥が増加してきた.
 → 耐すくわれ・しぼられ性の改善のために澱粉が使用されるようになってきた.
澱粉の添加量は,造型欠陥や鋳造欠陥の発生状況により変化させることが原則である.
ただし,あまり多量に添加すると生型砂の流動性・充填性が悪化する.
そのために,残存澱粉量で0.5~1.0%を越えないで使用することが一般的である.
ただし,例外的に鋳鋼では,すくわれ,砂かみ対策から残存澱粉1.0~1.5%で使用されている.
残存澱粉に範囲があるのは,澱粉の品位の差から来るものである.
鋳造用澱粉として市販されている澱粉の 品位は種々ある.
澱粉価,α化度等により澱粉の品位を判定できる.
市販の澱粉の中には品位の低いもの(クッション材の効果として使用されるようなケース)もあり,その場合は,流動性・充填性の阻害効果が低いために残存澱粉量が高くなる.
高品位澱粉では,残 存澱粉量は0.5%程度が限界である.
澱粉添加量は,ベントナイト添加量に対して5~10%%が多く,対ベントナイト10%添加で残存澱粉量が0.3~0.5%になる(高品位澱粉)ことが多い.

●澱粉の規格
鋳物用澱粉は,コーン,小麦,コメ,イモ等が色々あり物性も異なる.
Table5に試験方法を示す.
市販の鋳造澱粉は数々あるので,規格からその品位を推定する必要がある.
以下に示す規格が一般的な鋳造用澱粉の規格である.

水分 :5~15%
粒度 :45MESH以下 95%以上
α化度 :80~100%
膨潤度 :50%以上
粗蛋白 :0~10%
粗繊維 :0~20%

Table5 澱粉の試験方法
試験方法 備  考
水分 100℃乾燥法 10%前後が目安である.20%以上では,保存中に劣化しベータ(β)化が進行する.5%以下では混練に支障をきす.5~15%が適当である.
粒度 ロータップ法 45MESH以下95%以上が適当である.粗いと澱粉の効果が期待できない.混練が難しくなる.細かいほど良好である.
α化度 ジアスターゼ法 00%に近い程,鋳造用澱粉として良好である.ただし,この試験は,鋳造用澱粉に澱粉以外の物が入っていても,澱粉のα化度が高ければ,高くなる.
膨潤度 メスシリンダ法 50%以上で,良好である.簡易α化度試験とも言われる.この試験法は,同一組成の鋳造用澱粉なら,βから,αになるにしたがってリニアに増加する.澱粉の種類,組成が変化すると比較できない.
粗蛋白 ケルダール法 蛋白が多いと,保存性(腐食),窒素欠陥の問題がある.しかし,蛋白は粘性があるので,表面安定性改善には効果がある.粗蛋白は0~10%が適当である.
粗繊維 静置法 繊維は,クッション材としての役目と流動性改善の役目がある.しかし,粘性はないので鋳物砂の粘りは期待できない.0~20%が適当である.


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